働き方改革法案の成立で、2019年度から、年間5日以上の有給取得が企業側に義務付けられた。
有給の年間最大付与日数は20日で、繰越して保有できる上限は40日。労働基準法で決まっている。
ブラック企業の社員でなくとも、法案成立で歓喜しているサラリーマンは多いことだろう。
文字通り、働き方の改革を目指しての法案であるわけだが、「改革」というには少し物足りないのではないだろうか。
せめて改革と言うのであれば、最低10日の義務付けぐらいにはしてほしかった感はある。
有給の現状と、在り方、展望について考えていきたい。
目次
1.有給の現状
そもそも日本での有給の現状はどうなっているのだろうか。
国際比較では2016年、2017年の2年連続で有給消化率ワースト1位という不名誉に輝いている。
ちなみに2017年の消化率は50%だった。
「なんだ、意外と取得してるじゃん」なんて思った私とあなたは立派な日本人だ。
フランス、スペイン、ブラジル、オーストリア、香港は消化率100%だ。取って当たり前という感じだ。
2年連続なんて言っているが、2008年〜2013年までは6年連続で最下位だし、2014年、2015年だって下から二番目だ。想像はつくけれどやっぱりがっかりだ。どうせ今年もそんな感じだろう。
5日以上の取得を義務化とはいっても、50%の消化率が60%前後になる程度だろう。100%にはまだまだ遠く及ばない。
2.対策
2-1 有給を売却できるようにする
そんな現状だからこそ、取得できなくて保有上限の関係でカットされてしまう有給休暇を売れる制度を検討してほしい。
有給が、賃金が支払われる休暇だということは勿論分かっている。
きちんと取得できるよう、計画的に使わないから余ってしまうのだという意見ももっともな部分もある。
しかし、職場の部署によっては、年間通して休みが中々取れないような忙しいところ多々存在する。
それなのに、例えば、有給が取りやすい部署の、年間20日フルを使い切った人と、忙しくて5日しか取れなかった人の給料が同じだというのは、あまりにも不公平ではないだろうか。
だったら、使えなかった有給を、1日分5,000円でも3,000円でも、最悪1,000円でもいいから、売れるように(換金できるように)してほしい。
そうすれば、仕事のモチベーションだって上がるし、不公平も解消されるだろう。
また、売却金額に関しては、その人個人の勤続年数や、人事評価、能力等の加味によって換金相場を予め決めて周知しておけば、争いが起こることも少ないだろう。
2-2 問題点
しかし、これには懸念される大きな問題点がある。
それは、より稼ぐためにと、有給を使いやすい部署や立場の人ですら、換金しようとしてしまいかねないということだ。
そうなれば、本来弱者の救済措置である制度の趣旨から外れてしまう。
企業にとっても、公表する有給消化率の数字は見栄えが悪くなるわ、人件費が増加するわで、得なことは何もなくなってしまう。
せっかく制度を創設しても、その根幹を揺るがす事態となってしまう。
また、企業単体のみならず、上記で触れた日本全体の有給休暇取得率も低下してしまうおそれがある。
今回の成立法案の思惑とは逆行する形となってしまいかねない。
その辺のこともきちんと詰めながら検討していかなけばならない。
2-3 有給を個人に売る、個人から買う
では、有給を、企業にではなく、同じ職場の人に売るというのはどうだろうか。
例えば、有給を使い切ってしまった人(Aさん)がいる。
一方で、中々休みが取れずに有給が消滅してしまう人(Bさん)もまたいる。
この場合、もし有給が欲しいというAさんの希望と、使えないから有給を売りたいというBさんの希望が一致すれば、双方の合意の元で、有給の売買ができるようにするというものだ。
これであれば互いの利害が一致している訳だし、売買金額についても双方同意の額とすれば齟齬も出ないことだろう。
また、企業側にもデメリットはないし、個人間の売買であるから、有給消化率にも貢献するだろう。
誰にとってもウィンウィンで、メリット尽くしではないだろうか。
4.実際に売れる場合
では、有給を売れる場合というのはどういった場合なのだろうか。
調べてみると、
①会社側から法定日数を超える有給日数を付与されている場合
②退職者が消化し切れなかった場合
③有給休暇の時効(2年間)までに取得できなかった場合
というものがある。
①は、法定日数を上回って付与されている日数分については、買取が認められている。
②は、退職後に日数が余っていても当然失効してしまうため、消化できない日数分については買取が認められている。
③は、付与された有給が時効(2年間)までに取得できなかった場合、次の年に繰り越すことはできない、そのため、取得できなかった日数分は、買取が認められている。
しかし、この3つはあくまで企業によって取り扱いが違ってくる。
買取するところもあれば、しないところもあるようだ。
③なんかは、該当している人はとても多いであろうが、よほど精神的にタフな人でなければ、申出するのは気が引けるだろう。ちなみに私にはできない。
まとめ
以上、有給休暇について、多少のデータと共に、個人的見解を述べてみた。
有給の大前提は、労働者一人一人に与えられている「権利」だということだ。
権利は誰にも侵されるべきものではない。
2018年にもなって、未だに「有給チャンス」などと言って、部下の権利を蔑ろにする上司がいるような企業も少なくないことだろう。
そんな企業文化や考え方はクソだ。絶対的に間違っている。
また、有給取得に対して、必要以上に申し訳なさを感じるべきではない。そうやって無駄な気を遣っていては、いつまで経っても休めない。
有給消化率100%という、大それた目標に向かって、我々は、日本は、今後も険しい道を進んでいくことになりそうだ。